2020年6月20日
鍼灸師 榊原義盛

年齢の壁

 クリニックで不妊治療を試されてから鍼灸治療を受けられる方が多いです。初診時の平均年齢も高めです。
 残念ながら高齢の方は妊娠しても出産まで至らないケースもあり高度生殖医療で採卵も難しくなって治療を終了する方もおられます。20代の方は鍼灸治療とタイミング療法のみで妊娠されたかたもおられます。年齢による治療成績の差はあります。鍼灸治療のスタートは早い方が良いと思います。

妊娠適齢期がある

「結婚適齢期」や「高齢初産」という言葉は死語になっていますが、妊娠には「妊娠適齢期」があります。
 女性のライフスタイルや人生設計が変わり、結婚適齢期がなくなっても、「妊娠適齢期」や「分娩適齢期」には、まったく変化がありません。平均寿命に関係なく、女性の生殖年齢は大昔からまったく変わっていないのです。

妊娠できる年齢

 生理があるうちは妊娠できると思っている人がとても多いのですが、勘違いです。だいたい閉経の10年前から妊娠できなくなります。排卵がなくなった後も、卵の周囲の細胞が10年ほどホルモンをつくり続けるので、それで生理があるだけです。

 残念ながらまともな卵はなくなっているので、妊娠には至りません。だいたい51~52歳で閉経しますから、41~42歳が妊娠の限界のところです。もちろん、閉経も人によって10年ほどの幅があるので、妊娠可能の上限にも幅があります。それでも、35~45歳くらいの間に、健全な卵としての消費期限というか、限界が訪れます。

江戸時代の平均寿命は40歳

 人間の平均寿命が80代に伸びました。しかし40歳が30歳の若さに見えようが、閉経の年齢は延びていきません。卵巣の寿命も大昔から変わっていません。江戸時代なら、女性は閉経するあたりで死んでいました。

 20年前なら35歳以上でお産する人は高齢出産ということで心配し、それなりの姿勢で対処したのが、今は35歳でも心配せず、40代でも普通に妊娠・出産できるという錯覚をしています。40代で赤ちゃんができたという有名人の例も珍しくありませんが、たいていはそれなりの努力や治療をしているはずです。

現代医学の壁

 医学はとても進歩して、体外受精や顕微授精という高度生殖医療も進み、出産までのプロセスでの危険を防ぐ医療も進化しています。

 その一方で、勘違いと錯覚のために、みすみす赤ちゃんをもつチャンスを逃している人が増えています。妊娠できた人でも、もうちょっと早く来院してくれていたらもっと楽に妊娠できたのに、という人も非常に多いのです。とてももったいないことです。
 生殖年齢=妊娠適齢期を延ばすことは、ドクターにも現代の医学にも超えられない壁です。その厳しいともいえる事実を知ることから、すべては始まるのです。

結婚して

 よく「結婚して3年たちますが」「5年たちます」と言って「まだ子供ができないのです。不妊症かどうか検査するためにはどうすればいいですか」と聞く方がいます。避妊を行わず一般的な夫婦生活を行っている方は、「検査などしなくても、不妊症です。」

不妊とは

 一般的に、避妊を行わず一般的な夫婦生活も行っている場合、全体の80%の夫婦が1年以内に赤ちゃんを授かることができ、2年以内になると90%の夫婦が赤ちゃんを授かることができると言われています。

 結婚した夫婦が赤ちゃんを欲しいと思い、避妊を行わず一般的な夫婦生活を行っているにもかかわらず、1年以上赤ちゃんを授かる事ができない状態を不妊症と言います。

不妊症と病気の違い

 一般の病気は頭が痛いとかお腹が痛いとか、何か症状があります。症状に対して検査をして原因が判明し、診断がつき、診断に従って治療をします。
 しかし、不妊症は根本から違います。痛みも不快感もなく、検査でわかることは少ないです。そのため原因の特定が難しいです。精子も卵子も異常がないのに受精できない時もあるし、細胞分裂しないこともあります。排卵があっても、卵子が入っている袋(卵胞)の中の卵子がすでに変性していることもあります。

不妊症は病気でなく障害

 不妊症の原因に関しては、妊娠に至る過程の段階での何らかの障害があると考えます。排卵障害、ピックアップ障害、受精障害、卵管障害、着床障害といった呼び方をします。 
 卵自体の問題もあります。卵の質が落ちていて、赤ちゃんまでいけない卵、染色体異常が発生する場合もあります。
 妊娠できないのはなぜか、どこが悪いか、何が原因か、多くの方は原因を気にします。しかし、不妊症に関しては、検査の結果は正常、何か原因が見つかっても、本当の原因まで特定できないことがほとんどです。何らかの原因があって、そのプロセスで障害が起きているのですが、今の医学ではまだ全部解明させていないのです。

不妊症の原因

大きく分けると原因は女性側、男性側の片方、あるいはその両方の原因に分けられます。 
主な不妊症の原因となるのは次の4つになります。

  • 女性側の主な原因
    • 卵巣機能不全、子宮内膜症等
  • 男性側の主な原因
    • 無精子症、性交障障害等
  • その他
    • 不妊の原因が不明等
  • 女性、男性の両方の原因
    • 女性、男性のそれぞれに上記の原因がある

女性側の主な原因

  • 卵巣:卵巣機能不全
  • 卵管:狭窄(きょうさく)癒着、閉鎖、水腫(すいしゅ)
  • 子宮:筋腫(きんしゅ)、奇形、発育不全
  • 内分泌ホルモン異常
  • 子宮内膜症
  • その他

男性側の主な原因

  • 精巣(睾丸):無精子症
  • 精路閉鎖
  • 性交障害
  • 内分泌ホルモン異常
  • その他

不妊症の原因統計

WHO(世界保健機関)が発表した不妊症の原因統計

  • 女性が原因41%
  • 男性が原因24%
  • 男女ともが原因24%
  • 原因不明11%

不妊症の検査を夫婦ともに受けることが大切

その為、不妊症の検査は夫婦ともに受けることが大切です。

不妊症は原因が複雑

 不妊症の原因の多くは、複数の原因が、複雑に絡み合っています。それと不妊の原因として年齢が最も大きな原因です。

 年齢を重ねる事により妊娠率は徐々に低下していきます。赤ちゃんが欲しいと思っているにもかかわらず、なかなか妊娠しない場合には、その期間にとらわれず、早めに専門家に相談することが大切になります。

不妊症とSEXレス

 不妊症の原因の一つにセックスレスがあります。セックスレスというのは1カ月以上夫婦の間で性交渉がない状態です。

 現代の特徴としてセックスレスの夫婦は増えています。背景には、性欲の衰える時期には個人差がありますが、性欲をコントロールする男性ホルモンの分泌量は、20代をピークに、30代から徐々に減少します。性欲が衰え始める30代での結婚も珍しくありません。結婚してもあまりセックスをしたくない、SEXしようと思っても勃起しなかったりします。

 セックスレスになれば、自然に妊娠することが困難です。セックスレスというのは不妊の原因の中でも体には何の問題もありません。

不妊症の検査

 不妊の原因が女性側、男性側、あるいは両方に原因があるのか、さまざまです。不妊症の検査はどちらか一方ではなく、夫婦そろって検査されることをお勧めします。残念ながら検査を受けてもこれといった原因がわからないケースもあります。科学でも原因が分からないこともあります。


 主な検査内容

  • 基礎体温
  • ホルモン検査
  • 経膣超音波検査
  • 頸管粘液検査
  • フーナーテスト
  • 精液検査

そのほか子宮鏡検査、卵管鏡検査、腹腔鏡検査もあります。
 検査は、一度にできるわけはなく生理周期に合わせて行われます。子宮卵管造影検査は、レントゲンなので排卵前に頸管粘液検査やフーナーテストは排卵期にそれぞれの時期に応じた検査を行います。

男性不妊の原因

男性不妊には、先天性と後天性のものがあります。
 先天性の男性不妊の原因は、様々な遺伝子的要因や発育段階で受けた影響等で性機能不全になるものです。性機能不全とは、性的欲求や性的興奮とその最高潮などが減退・欠如する状態を言います。

  • 勃起障害(ED)
  • 早漏
  • オルガスムス障害
  • 遅漏等

後天性の男性不妊の原因は、

  • ストレス
  • アルコール
  • 喫煙
  • 肥満
  • 糖尿病
  • 病気や薬の影響
  • 精巣の損傷もしくは機能障害
  • 精子の産出あるいは射精に関するトラブル

男性不妊の原因と種類

造精機能障害
 男性不妊の原因の約90%が造精機能障害です。精子を作り出す機能自体に問題があり精子をうまく作れない状態です。精巣や内分泌系(ホルモン分泌等)の異常が障害を引き起こします。

 一度の射精で精子の数は、数億とされています。そのうち子宮の前で99%が死滅し子宮には数十万以下となり卵子の周囲まで到達できるのは、数百以下とされています。そのため精子の数が少ない精子の運動性が乏しい。卵管に到達する精子が減り妊娠しない原因となります。

造精機能障害の種類

無精子症・乏精子症・精子無力症があります。
 無精子症は、造精機能障害の中でも重い症状です。精液中に精子が一匹もいない状態です。精巣や精巣上体に精子が存在していれば顕微授精などの不妊治療で受精・妊娠することができます。


 乏精子症は、精液の中に精子はいるけれどその数が少ないです。精子の数が基準を少し下回る程度であればタイミング法などを行います。さらに精子の数が少ない場合は、人工授精体外受精顕微授精等の不妊治療を行います。

 精子無力症は、精子の数は正常にあるけれど製造された精子の運動率が悪い症状です。精子の状態により人工授精顕微授精などの不妊治療を行います。

不妊治療の方法

不妊の治療方法はいくつもあり、不妊の原因によって治療内容も変わってきます。ここでは代表的な治療方法を紹介します。

  • タイミング法
  • 人工授精
  • 体外受精
  • 顕微授精

不妊治療はステップアップ治療

 ステップアップ治療は、治療をしてそれに対して結果が出るかどうかで判断します。他の病気の治療とは根本的に違います。どのくらいで次に進むかはドクターや患者さんによりいろいろです。一般的に5~6周期でステップアップし、2年以内に結果を出すことが望ましいとされています。

タイミング法

 一般的に最初に用いられる治療方法になります。粘液(おりもの)の状態や卵胞の大きさ、血中値などから排卵日を正確に把握し、その日に夫婦生活を営んでもらう事で自然妊娠を目指す方法です。

 また、排卵がない場合や、排卵の状態がよくない場合には、卵胞の発育と排卵をうながすよう、排卵誘発剤を併用する方法もあります。

人工授精

 人工授精は、人の手を介して男性の精液を女性の子宮内に注入する方法となります。人工授精は名称から人為的に妊娠させる印象があります。実際は、人の手を介して手助けを行う方法の中で、最も自然な方法です。

人工受精は下記の方が対象になります。

  • ヒューナー(フーナー)テストが良くない場合
  • 夫婦生活を排卵日に行ってもなかなか妊娠しない場合
  • 精子に不妊の原因があると考えられる場合

※ヒューナー(フーナー)テストとは排卵前、頸管粘液が出ていると思われる時期にSEXをして粘液の中に精子がどのくらいいるか調べるテストです。

体外受精

 体外受精とは、体の外で精子と卵子を受精させ、受精卵を子宮内に戻す方法です。体外受精は、以前は高度な不妊治療でした。最近では一般的な治療方法の一つになってきています。
 体外受精は下記の方が対象になります。

  • 一定期間人工授精を行ったが妊娠しない場合
  • 精子に不妊症の原因があると考えられる場合
  • 不妊症の原因が卵管の閉塞が原因の場合

顕微授精

 体外受精と同じように体外で受精させ、受精卵を子宮内に戻す方法です。体外受精の一種が顕微授精です。


 顕微授精は受精の方法に違いがあります。体外受精では、あくまでも精子の力に頼って受精をさせます。

顕微授精はガラス管等を使って精子を卵子に注入させ受精させます。体外受精よりもより人工的に人の手を介した方法です。

 顕微授精では受精障害が解決します。ピックアップ障害も受精障害も、原因は依然不明ですが、障害を解決し、受精は成立します。自然妊娠と同様に、健康な赤ちゃんが生まれます。

 顕微受精は下記の方が対象になります。

  • 体外受精でも受精しない・しにくい場合
  • 精子の運動性不良・奇形精子の割合が高い場合
  • 受精障害を引き起こすと考えられる抗精子抗体が存在する場合

不妊治療をして出産できる確率

 体外受精をして出産にいたる確率を表した現実はとても厳しいです。妊娠できる確率は1回平均20~30%程ですが、年齢により大きく変わります。30歳で不妊治療をして赤ちゃんを授かる確率は19.9%35歳で16.3%40歳で7.7%45歳では急激に減って0.6%です。

不妊治療をいつまで続けるの?

 残念ながら体外受精・顕微授精をしても妊娠しない方がおられます。精神的な負担と金銭的な負担が重なり不妊治療が上手くいかないことで離婚までされる方おられます。

 最悪の事態にならないために不妊治療を受けられる前にどの段階まで不妊治療を続けるのか最初に決めておくことを薦めしています。例えば治療費を○百万円までかけて治療をしても妊娠しなかったら辞める。体外受精・顕微授精を○回までして妊娠しなかったら辞めると夫婦2人だけで話し合って決めてください。妊娠出産がゴールではありません。妊娠出産後の生活を考えてください。子育てする時間と費用は、不妊治療の何倍も必要です。

鍼灸治療のできること

 西洋医学の不妊治療は、科学的に卵子と精子を取り出して受精させ胚まで育てて子宮に戻すことまでです。

 20代後半~32歳までの妊娠率は40%です。出産されるは20%になります。妊娠をしたから出産できるわけではありません。

 女性が子供を出産することは命がけです。鍼灸治療は、身体を整えることにより妊娠しやすい身体つくりをします。

 妊娠後は出産までの辛い症状を軽減させて母子とも健康な状態に導くお手伝いをします。

 

最後に

 不妊治療で鍼灸治療をお薦めする理由は、不妊治療を並行して来られる方を見ておりますと不妊治療で精神的・肉体的・金銭的に疲労困憊されている方が多くおられます。たとえ妊娠をされてもあなたの身体が疲労困憊の状態では、赤ちゃんをお腹の中で育てるだけの余力がないです。

まずは精神的・肉体的に妊娠しやすい身体つくりをすることをお勧めします。夫婦が健康な状態が不妊治療で一番大事なことだと思います。

参考HP

医療法人浅田レディースクリニック
丘の上のお医者さん
医療法人身原病院
あらかきウィメンズクリニック
医療法人鉄蕉会 医療ポータルサイト
NHK 健康ch

妊活中の4組の夫婦、口にできない本音/ロート製薬/「少しずつ、もっと、家族になろう。」PR映像

【不妊治療の現状】4月28日放送 TSSみんなのテレビ

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